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  • 2026.11.06
    なぜDXは止まるのか⑤: DXの本当の目的は、"効率化"ではない――公益法人に必要な"説明できる組織"とは

2026.11.06
なぜDXは止まるのか⑤: DXの本当の目的は、"効率化"ではない――公益法人に必要な"説明できる組織"とは

トピック・コラム

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前回は、DXが止まる原因は決意の弱さではなく、「変える順番」にあるというお話をしました。最初の変化を一つの業務に絞る、という内容です。

自組織の「最初の一業務」を、すでに思い浮かべた方もいるかもしれません。その一業務を選んだこと自体が、大きな前進です。

ただ、いざ理事や職員に説明しようとすると、言葉に詰まることがあります。「効率化のためです」と言ってみても、相手の反応はどこか鈍い。

最終回の今回は、そもそも何のために変えるのかを考えます。公益法人にとってのDXの目的を言い直し、このシリーズの4回分をつなげてみます。

    1. 「効率化のため」が、なぜ響かないのか

    DXの目的として、最もよく使われる言葉は「効率化」です。けれど公益法人の現場では、この言葉がなかなか響きません。

    「うちは利益を追う組織じゃないから、効率化と言われてもピンとこない」

    「説明責任なら今も果たしている。監査も毎年通っている」

    こうした反応は、怠慢から出ているわけではありません。事業の目的に共感して働く職員にとって、「速く・安く」は自分の仕事の意味とつながりにくい言葉です。

    効率化に価値がない、という話ではありません。目的の位置に置くと、人が動かないということです。


    2. 公益法人は、常に「説明する組織」です

    では、公益法人が本当に求められていることは何でしょうか。それは、説明です。

    公益法人は、日々さまざまな相手に説明を求められています。

    ・  行政庁:事業報告等の提出や、立入検査への対応
    ・ 理事会・評議員会、監事:決算の承認や監査
    ・ 助成団体:補助金・助成金の実績報告
    ・ 寄付者:寄付金がどう使われたかの報告

    ここで、よくある場面を二つ描いてみます。

    一つは、監事監査の場です。「この共通費の按分比率は、なぜこの数字なのですか」と聞かれます。返せる答えは「前年どおりです」だけで、最初にそう決めた理由は誰も知りません。

    もう一つは、補助金の実績報告の後です。ある経費の根拠資料を求められ、探し出すのに数日かかります。最後は、異動した前任者に電話して確認することになります。

    どちらの場面でも、処理そのものは間違っていません。困るのは、「なぜそうしたか」を組織として示せないことです。


    3. 「説明できる組織」とは何か

    説明できる組織とは、次の三つが揃った状態だと考えています。

    ・ 情報が残る:処理の結果と根拠資料が、決まった場所にある
    ・ 判断の理由が見える:科目や按分比率を選んだ理由が、記録として読める
    ・ 人が替わっても引き継げる:担当者がいなくても、同じ説明ができる

    振り返ると、このシリーズで扱ってきた停滞は、どれも「説明できない」の別の顔でした。

    第1回の停滞構造は、担当者の頑張りで業務が成り立ち、仕組みとして説明できない状態でした。第2回の例外運用は、「この案件だけ特別」の理由が人の記憶にしかない状態です。第3回の担当者依存は、判断の理由が書かれていない状態でした。

    第4回の変える順番も同じです。何のために変えるのかを言えなければ、選んだ一業務もまた止まってしまいます。


    4. 目的を言い直すと、最初の一手が変わります

    DXの目的を「説明できる組織になること」と言い直すと、最初に手を付けることが変わります。

    効率化が目的なら、まず「どの仕組みが速いか」を比べたくなります。説明できることが目的なら、まず「何を記録に残すか」を決めることになります。

    ここで実務上のポイントを整理します。

    Do: DXの目的を「説明責任を果たせる組織になること」と言い直す。第4回で選んだ一業務で、処理の結果だけでなく「なぜそうしたか」を記録に残す

    Don't: 「まずツールを決めよう」から始める

    現場での判断基準は一つです。「この処理を、前任者に聞かずに第三者へ説明できるか」。説明できない業務から、順に手を付けていけば十分です。


    5. おわりに

    DXの本当の目的は、速くなることではありません。説明できる状態になることです。効率化は、その結果としてついてきます。

    説明できる組織は、担当者が替わっても、行政庁や理事会、寄付者からの信頼を保ち続けられます。それが、公益法人にとっての持続可能性です。

    DXが止まっていたのは、組織に力が足りなかったからではありません。目的と順番を言い直せば、組織は動き出せます。

    このシリーズが、自組織の「止まっていた理由」を見つめ直し、最初の一手を踏み出すきっかけになれば幸いです。


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