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    なぜDXは止まるのか②: なぜ毎回「この案件だけ特別」になるのか――DXを止める例外運用の正体

2026.07.20
なぜDXは止まるのか②: なぜ毎回「この案件だけ特別」になるのか――DXを止める例外運用の正体

トピック・コラム

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前回は、「DXが進まないのは担当者のせいではない」というお話をしました。公益法人には、民間企業とは異なる構造的な停滞要因がある、という内容です。

読んでいただいた方の中には、「構造の問題だと分かっても、では具体的に何が自分の組織を止めているのか」と感じた方もいるのではないでしょうか。

今回は、その正体のひとつである「例外運用」について掘り下げます。実はこれこそが、システムの機能不足以上にDXを止めている最大の要因です。

    1. 「特別対応」が生まれる瞬間

    たとえば、こんな場面に心当たりはないでしょうか。

    決裁は本来、複数の承認者を順番に経て進むものです。

    しかし、最終決裁者が長期の出張や研修で不在になると分かっている案件では、順番が入れ替えられることがあります。先に最終決裁者の判断だけをもらっておき、本来先に確認すべきだった承認者は、あとから内容をチェックする。決裁規程は、こうした不在のケースまでは想定しきれておらず、現場が独自に調整して運用しているのです。

    この判断自体は、合理的です。案件を止めないための、現実的な工夫だからです。

    問題は、こうした「今回だけ」の判断が、少しずつ積み重なっていくことにあります。一つひとつは小さな逸脱でも、蓄積すれば組織全体の運用は、規程ではなく「その場に居合わせた人の裁量」で動くようになっていきます。


    2. 気づけば標準になっている

    例外運用の厄介な点は、それが「例外」のまま留まらないことです。

    最初は「今回だけ」だったはずの順序変更が、次に似た状況でも繰り返されます。担当者は前回の記憶を頼りに対応し、いつの間にか「うちのやり方」として定着してしまいます。

    書類の見た目は、正規のフローと変わりません。だから、記録を見ただけでは誰も気づけないのです。

    公益法人では、この逸脱がとりわけ起きやすい事情もあります。所轄庁への報告や理事会・評議員会の承認など、公益法人の意思決定の階層は、説明責任を果たすために必要があって設けられています。だからこそ、その分だけ正規ルートには時間がかかり、「急ぎの案件では現場で工夫するしかない」という場面が、他の組織より頻繁に生まれてしまうのです。

    順序の逸脱だけではありません。もうひとつよくあるのが、システムの外側に、担当者だけが把握している管理表が存在するケースです。
    会計システムでは扱いきれない情報(たとえば按分前の予算残高など)を、担当者が個人のExcelで別管理している。最初は「システムに項目がないから、仕方なく」という、ちょっとした工夫のはずでした。

    しかし、この状態を放置すると何が起きるでしょうか。

    ファイルや帳票そのものは、担当者が異動・退職したあとも残ります。しかし、「なぜこの順番で処理しているのか」「なぜこの形で管理しているのか」という背景や判断基準は、本人の記憶とともに失われます。

    後任者は、理由が分からないまま同じ運用を踏襲するしかありません。それが正しい対応なのか、見直すべき慣習なのかを、誰も判断できない状態になるのです。



    3. 例外運用がDXを止めるメカニズム

    ここまでの話が、なぜDXの停滞に直結するのでしょうか。

    答えはシンプルです。標準化されていない業務は、デジタル化できません。 システムは基本的に、決まったルールに沿って処理を進める仕組みです。案件ごとに異なる例外処理が積み重なった業務は、そのままではシステムに乗せることができず、結局「今まで通り人がやる」という選択に戻ってしまいます。

    つまり、DXが進まない現場でよく聞かれる「うちは特殊だから、システム化は難しい」という言葉の裏には、こうした例外運用の積み重ねが隠れていることが少なくありません。

    ここで実務上のポイントを整理します。

    Do: 自組織の例外運用を棚卸しし、「本当に例外か」「実は標準化できるか」を一つずつ見極める

    Don't: 例外を放置したまま、システム導入や機能要件の検討を先に始める
    例外運用の棚卸しを飛ばしてシステム選定に進むと、結局は「システムに合わせられない業務」が個別対応として残り続け、DXの効果は限定的なものになってしまいます。


    4. おわりに

    「うちは特殊だから」という言葉は、多くの現場で自然に出てくる感覚だと思います。それ自体が悪いわけではありません。問題は、その感覚を検証しないまま、例外運用を積み重ね続けてしまうことです。

    一度立ち止まって、「特殊だと思っているものの何割が、本当に特殊なのか」を問い直してみてください。それが、DXを止めている構造に手をつける最初の一歩になります。

    次回は、「今は紙でも回っている」という安心感の裏に潜む、担当者依存が限界を迎える瞬間について扱います。


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