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    令和6年基準下における収支予算書を考える~現制度と「予算管理」のジレンマをどう乗り越えるか~

2026.08.03
令和6年基準下における収支予算書を考える~現制度と「予算管理」のジレンマをどう乗り越えるか~

「研究会」だより

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 令和7年4月に施行された新公益法人会計基準により、財務諸表の内容が大きく変わりました。これまでの「正味財産増減計算書」が「活動計算書」へと変更され、より経営成績が把握しやすくなったとされている一方で、これに伴う「収支予算書」のあり方について、現場の担当者様から多くの戸惑いの声が聞かれます。
収支予算書には、様式の定めはなく、法的に必要な要件が示されているのみで、正味財産増減計算書から活動計算書への変更に伴う計算構造や表示科目の変化に対応して、どのような形式の予算書を作成すればよいのかといったことです。しかし、直近のガイドライン改定(令和8年7月最終改訂)において、収支予算書に関する記述がアップデートされ、少し具体的な内容がみえるようになりました。
 今回は、かつての平成16年基準以前にあった「資金ベース」の収支予算書と、現行の令和6年基準における「活動計算書ベース」のものを対比させながら、予算管理上の現状の課題と目指すべき形について考えてみたいと思います。

    1. かつての「資金ベース」と現在の「活動計算書ベース」の決定的な違い

    そもそも、法人の予算制度とは何を目的としているのでしょうか。利潤獲得が主目的の企業とは異なり、公益法人は、社会的課題解決を目指し、そのための活動を行うことが主目的になります。その中で予算は、どのような活動を行い、その実施のための資金をどのように調達するかという資金的な裏付けを示すものである必要があります。
    ここで思い起こされるのが、平成16年基準以前のいわゆる「資金ベース」の収支予算書です。元はこちらがメインで、「いくら収入があって、何にいくら支出するか」という現金(資金)の動きをダイレクトに示す仕組みでした。しかし、その後、会計基準、制度改革を経て今回の令和6年基準においては、会計の主役は「正味財産増減計算書」⇒「活動計算書」へとシフトしていきました。現金収入・支出を伴わない収益費用を含み、現金収入・支出であっても収益費用に該当しないものを除外する、「資金(現金)」ベースの予算とは明らかに役割が異なるものです。この変遷に伴い、予算管理のあり方も大きな転換点を迎えています。直近のガイドライン改定では、収支予算書について次のような趣旨が明記されています。

     〇理事会が予算(見積もり・目標)と実績との乖離等を法人の管理・経営に活用すること
     〇法人のガバナンスを確保し、ステークホルダーへの説明責任を果たすこと
     〇収支予算書が明確な根拠に基づき策定されていない場合や、予実管理を行うに足る情報
      が記載されていない場合には、監督上の措置やガバナンス上の懸念につながり得ること

    つまり、現代の収支予算書は単なる形式的な作成書類ではなく、法人の「経理的基礎」や「財務規律」を担保し、ガバナンスを効かせるための極めて重要な経営ツールとして位置づけられています。


    2. 現行制度が抱える盲点と、現場における「資金ベース予算」の実態

    しかし、ここで見逃せない大きな事実があります。それは、制度やステークホルダーへの報告基準が「活動計算書ベース」にシフトする一方で、多くの現場では今なお「資金ベース」で予算管理を行い、実質的な資金収支ベースの予算書を作成し続けているということです。
    現在の制度やステークホルダー向けの公式な報告の枠組みにおいては、この「現金(資金)の動きにより予実管理を行う」という視点は存在しません。キャッシュフロー計算書では執行と入出金のタイミングが一致しないことがあるため、予算が果たす役割は期待できません。

    ① 「活動計算書」ベースの予算が示す内容
    活動計算書ベースの予算では、実際に現金の支出を伴わない「減価償却費」や各種「引当金」などが計上されます。逆に、固定資産の取得や売却のように資金の大きな増減を伴うものであっても、活動計算書の変動要因には挙がってこない取引が存在します。収益費用差額計算のための予算は、予定活動計算書に過ぎません。手元の資金が足りなくなるリスクに気づきにくい構造的な課題があります。事業実施のために積立資金を取り崩すとか金融機関から借入を実施するなど事業活動の資金的裏付けである財源の一部が示されなかったり、常に事業活動の全貌を示しているとは限りません。

    ② 厳格な予算管理に「資金収支予算書」が不可欠である理由
    こうしたリスクを防ぎ、法人の資金管理を行うためには、厳格な予算管理の一環として余裕資金の残高や事業活動の全貌を表すことができる「資金収支予算書」が不可欠となります。
    実際、多くの法人では、制度上の建前にとどまらず、実務の安全性を担保するために自発的に資金収支ベースの予算書を作成・活用し続けています。


    3. 令和6年基準下における「収支予算書」のあるべき姿

    では、このジレンマを乗り越え、これからの公益法人が目指すべき収支予算書の姿とはどのようなものでしょうか。ポイントは大きく3つあります。

    ① 「利益(収益費用差額)の管理」と「資金の管理」の補完
    かつての資金ベースが持っていた「事業実施の財源を明確にする」「現金(資金)の枯渇を防ぐ」という優れた機能の重要性は、今も変わりません。活動計算書ベースの予算を基本としつつも、実務上、現金(資金)の動き(設備投資や借入金返済、特定目的の積立資金の取崩し等)を捉える資金収支予算を別個に、あるいは連動させて運用する工夫が不可欠です。

    ② 実態に即した「意味のある区分」の設定
    ガイドラインでも示されている通り、収支予算書は単なる横並びの表ではなく、理事会が経営に活用し、ガバナンスを効かせるためのものでなければなりません。各事業の収支や、費用の形態別内訳など、自組織の予実管理に本当に必要な単位まで落とし込んだ、実のある区分を行うことが求められています。

    ③ 「説明責任」を果たすための戦略的ツールへの昇華
    収支予算書を「行政庁への提出書類」としてのみ捉えるのではなく、「我が法人はこのように財源を確保し、社会的目的のために資金を循環させます」というステークホルダーへの力強いメッセージ、すなわち戦略的ツールとして再定義する必要があります。


    4. おわりに:変化の波を、法人の体質強化のチャンスに

    かつての資金ベースの予算づくりに比べると、現在の新基準下における予算管理は複雑さを増したように感じられるかもしれません。しかし、その奥にある本質は、「法人がいかに健全な財政基盤のもとで、持続可能な社会的価値を生み出し続けるか」というガバナンスの根幹に関わる問いです。
    制度の枠組みからは外れている「資金管理の重要性」をしっかりと見据え、多くの法人が実践しているように、資金収支ベースの予算を組み合わせながら実質的な安全性をつくり出していくこと。それこそが、これからの公益法人に求められる知恵ではないでしょうか。
    今回の制度改定やガイドラインの改定を単なる負担と捉えず、自組織の予算管理の仕組みを見直し、かつての資金管理が持っていた確実性と、新基準が求める透明性を両立させた予算へとアップデートする絶好の機会と捉えてみませんか。
    私たちが提供するシステムやサポートも、皆様がこうした制度の変化に翻弄されることなく、本来の事業活動と健全な財務管理に集中できる環境をつくるためのものでありたいと考えています。新基準という新しい羅針盤のもと、皆様の組織の未来を支える予算管理のあり方を、一緒に考えてまいりましょう。


東京本社 03(5829)5682 大阪支店 06(6390)3777 九州支店 092(292)0681 9:00~18:00(土・日・祝日・年末年始を除く)

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