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公益法人こそ考えておきたいBCP(事業継続計画)の作り方
2026.10.16
公益法人こそ考えておきたいBCP(事業継続計画)の作り方
「研究会」だより

BCP(事業継続計画)と聞くと、工場や物流拠点を持つ大企業のための特別な計画、というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。実際、2025年の調査では策定率は全体で20.4%、中小企業に限ると17.1%にとどまっており、多くの組織にとって「いつか手をつけたいが、まだ着手できていない」というのが実情のようです。
公益法人においても事情は同じ、あるいはそれ以上かもしれません。日々の事業運営や制度対応に追われる中で、「もしものとき」についてまとまった時間をとって考えるのは簡単ではないでしょう。
ただ、BCPは「大きな災害が来たときのための特別な計画」というより、「自分たちの法人が何を大切にしていて、それをどう守るか」を整理しておく機会でもあります。今回は、公益法人がBCPを考えるときに押さえておきたいポイントを、作り方の手順に沿って整理しました。
目次
- 1. BCPとは何か、公益法人にとってどんな意味があるのか
- 2. BCPづくりの5つのステップ
- 3. 無理なく始めて、育てていくために
- 4. おわりに
- 5. オススメ関連ブログ
1. BCPとは何か、公益法人にとってどんな意味があるのか
まずBCPの定義から確認しましょう。中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、BCPを「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画」と説明しています。
これを公益法人に置き換えると、「地震や感染症の流行、システム障害、あるいは中心となって動いている職員の急な不在といった事態が起きても、法人が担っている公益目的事業を止めない、あるいはできるだけ早く再開するための備え」と言い換えられます。
公益法人にとってBCPを考える意味は、少なくとも3つあると私たちは考えています。
1つ目は、事業の受益者への責任です。公益法人が行う事業の多くは、福祉・医療・教育・文化支援など、利用者や会員にとって日常生活や活動の基盤になっているものです。何らかの事態で事業が長期間止まってしまえば、その影響は法人の中だけにとどまりません。
2つ目は、組織運営の特性です。公益法人は一般の企業に比べて職員数が少なく、特定の理事や職員に業務が集中しやすい傾向があります。経理や事業運営のキーパーソンが不在になったときにどう動くか、あらかじめ整理しておくことは、規模の小さい法人ほど重要になります。
3つ目は、資金面の制約です。公益法人に‗使途不特定財産保有上限があり、使い道の決まっていない財産を無制限に積み立てておくことができません。万一のときに備えて多額の資金を手元に置いておく、という対応がそもそも取りにくい制度設計になっているからこそ、資金に頼らない備え(情報の整理、役割分担、連絡体制など)の価値が相対的に高くなります。
2. BCPづくりの5つのステップ
BCPと聞くと身構えてしまいますが、中小企業庁の指針などを参考にすると、取り組みは概ね次のような流れで進められます。最初から完璧なものを作る必要はなく、まずは自法人の実情に合わせて書き出してみることが大切です。
・ステップ1.基本方針を決める:
「何のためにBCPに取り組むのか」を言葉にします。「利用者・会員へのサービスを止めない」「職員の安全を守る」「法人としての信用を維持する」など、自法人が大事にしたいことを整理します。
・ステップ2.中核となる事業を洗い出す:
法人が行っている複数の事業のうち、「これだけは止められない」「止まると影響が大きい」ものを特定します。すべてを同時に守ろうとすると計画が重くなりすぎるため、優先順位をつけることがポイントです。
・ステップ3.想定するリスクを整理する:
地震・水害などの自然災害だけでなく、感染症の流行、システム障害、特定の職員の急な不在なども含めて、自法人にとって現実的に起こりうる事態を書き出します。
・ステップ4.事前にできる備えを決める:データのバックアップ、連絡網の整備、業務の属人化を減らすためのマニュアル化など、平常時からできる対策を具体化します。
・ステップ5.緊急時の体制と連絡手段を決めておく:
誰が意思決定を行うか、誰が何を担当するか、理事・評議員も含めた安否確認・連絡の方法をあらかじめ決めておきます。一度に全部を仕上げようとせず、まずはステップ1〜3を書き出すだけでも、法人としての備えは大きく前進します。
3. 無理なく始めて、育てていくために
BCPの策定率が中小企業でも17.1%にとどまっている背景には、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」(42.7%)、「策定する人材を確保できない」(33.1%)、「策定する時間を確保できない」(28.6%)といった理由が上位に挙がっています。公益法人の現場でも、同じような事情を感じる方は多いのではないでしょうか。
だからこそ、BCPは一度で完成させるものではなく、理事会や職員会議の議題として少しずつ育てていくものと捉えていただくのがよいと思います。たとえば、まずは「中核となる事業は何か」「緊急時に誰が意思決定するか」といった最低限の項目だけを決めておき、年に一度、見直しの機会を設けるだけでも十分な備えになります。
また、BCPを整備しておくことは、ガバナンスの観点からも意味があります。理事会や評議員会で「もしものときにどう対応するか」を議論しておくこと自体が、組織としての意思決定プロセスを確認する機会になりますし、外部理事・外部監事に対しても、法人のリスク管理体制を具体的に説明できる材料になります。
4. おわりに
BCPは、何か大きな危機が迫っているから作るもの、というよりも、法人が大切にしている事業や人を守るために、平常時から準備しておく考え方そのものだと思います。「うちはまだ大きなリスクに直面していないから」と後回しにするのではなく、むしろ落ち着いて検討できる今だからこそ、取り組むタイミングなのかもしれません。
まずはステップ1の基本方針を、理事会や職員の皆さんと一緒に話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。







