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令和6年会計基準解説:公益法人が見逃せない重要ポイント
会計・税務
令和7年(2025年)4月から施行される新しい公益法人会計基準は、多くの公益法人にとって大きな変化となります。財務諸表の形式や新たな注記の導入など、この基準は財務情報の透明性と実務運用に大きく影響します。
この記事では、新しい会計基準で特に注目すべきポイントを解説します。
目次
- 1. 新しい会計基準の背景
- 2. 貸借対照表の見直し
- 3. 活動計算書への移行
- 4. 注記・附属明細書の拡充
- 5. 実務上の影響
- 6. 結論
1. 新しい会計基準の背景
公益法人の会計基準は、財務情報の適正な開示を目的としています。今回の施行では、その透明性をより高め、法人の運営状況を関係者に正しく伝えるための工夫が施されています。
2. 貸借対照表の見直し
資産区分の見直し
新しい基準では、固定資産の区分がこれまでの「基本財産」「特定資産」「その他固定資産」から、「有形固定資産」「無形固定資産」「その他固定資産」に改められます。これにより、従来は固定資産として計上されていた普通預金などは、今後は流動資産として扱われるようになります。
注:流動資産とは、1年以内に現金化できる資産を指します。
貸借対照表内訳表の新たな取り扱い
これまで貸借対照表の一部として含まれていた内訳表は、新たな基準により注記事項としての開示が求められるようになります。
3. 活動計算書への移行
名称と内容の変更
従来の「正味財産増減計算書」が「活動計算書」という新しい名称になり、財務情報の表現も一新されます。これに伴い「正味財産」も「純資産」へと変更されます。
区分表示の変更
活動計算書では、純資産の増減を「経常活動」と「その他活動」に分けて表示します。これまでのような一般正味財産増減の部と指定正味財産増減の部による財源別の開示は、本表から注記事項へ移行します。
費用科目の表示変更
費用科目の表示方法も変わります。「給料手当」「旅費交通費」「水道光熱費」などの形態別分類による表示から、「公1事業費」「公2事業費」「収益事業費」「管理費」など、活動別の分類で示されることになります。
4. 注記・附属明細書の拡充
新しい公益法人会計基準により、注記や附属明細書がより詳細に求められるようになりました。
以下にその一例を示します。
1. 貸借対照表関連の注記
・ 会計区分別内訳(従来の貸借対照表内訳表に代わるもの)
・ 資産および負債の状況(従来の財産目録に該当)
・ 使途拘束資産の内訳と増減額および残高
2. 活動計算書関連の注記
・ 財源区分別内訳(従来の正味財産増減計算書の区分表示の代替)
・ 指定純資産の内訳や控除対象財産(6号財産)の発生年度別残高と使途目的計画
・ 事業費・管理費の形態別区分
3. その他の注記追加
・ 中期的収支均衡に関する情報や公益充実資金に関する情報
・ 公益目的事業比率や使途不特定財産規制、公益目的事業継続予備財産に関する情報も新たに加えられています
5. 実務上の影響
新しい公益法人会計基準の施行は、日常業務や管理方法において多くの公益法人に影響を及ぼします。以下は、実務における具体的な変化とその対応方法です。
日常の仕訳処理の変更
新しい基準では、指定純資産の形態別把握が必要となります。これにより、日常の仕訳処理においても、財務データをより細かく分類し、管理することが求められます。例えば、資産がどの事業目的で使用されるかを正確に記録し、後日注記として報告できるように整備する必要があります。
新たな情報管理の必要性
特に控除対象財産(6号財産)に関する詳細な情報開示は、これまで以上に厳密な管理と報告が必要になります。これにより、公益法人内で新しいルールを設定し、適切な管理体制を構築することが求められます。財産の取得時期や使用目的を明確にし、適切な形で情報を蓄積・管理するプロセスが不可欠です。
定期提出書類との関係
新しい基準では、財務諸表の注記や附属明細書が従来の定期提出書類の一部を代替する形となります。
6. 結論
令和6年の新しい会計基準の施行は、公益法人にとって財務情報の開示における透明性と詳細性を向上させる重要な一歩です。この施行によって、公益法人は財務管理の精緻化を図り、関係者に対する説明責任を強化できます。しかし、それを実現するためには、会計処理と情報管理の方法を見直し、十分な準備が求められます。