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【実務解説】公益法人に義務化される区分経理 – 新会計処理のポイントと実践方法
法令・制度改正
令和7年(2025年)4月から、公益法人において「区分経理」の導入が義務化されます。この新制度は、公益法人の財務透明性を向上させ、より効果的な運営を支援することを目的としています。全ての公益法人にとって対応が必要となる重要な制度改正です。
本記事では、区分経理の基本から具体的な実践方法、スムーズな移行のための準備ステップまで、わかりやすく解説します。
目次
- 1. 区分経理の基本とは?
- 2. 区分経理の具体的方法
- 3. 公益目的取得財産残額の算定簡素化
- 4. 区分経理導入の準備ステップ
- 5. まとめ
1. 区分経理の基本とは?
区分経理は、公益法人が事業ごとの収支を明確にするための会計処理方法です。新制度では、以下の3つの区分で経理を行うことが義務付けられます
●公益目的事業: 法律で定められた公益活動に該当する事業
●収益事業等: 公益目的事業”以外”の事業(収益事業・その他の事業(相互扶助事業))
●法人運営: 管理部門や運営費用に関わる事業
この区分によって、各事業の収支が明確化し、公益法人の活動実態を正確に把握できるようになります。
2. 区分経理の具体的方法
区分経理では、収益と費用を適切に配賦することが重要です。以下は、その具体的な方法です。
収益と費用の配賦方法
●直接配賦
特定の事業に直接関連する収益や費用は、該当する区分に直接配賦します。
例:公益目的事業のための講演会収益は「公益目的事業」に直接配賦。
●按分配賦
複数の事業に関連する共通費用(例:事務所家賃、光熱費)は、合理的な基準で按分して
配賦します。
按分基準の例
●従事時間割合: 職員が各事業に従事した時間の割合
●使用面積割合: 各事業で使用した事務所面積の割合
●職員数比割合: 各事業に従事した職員数の割合
配賦記録の重要性
●配賦方法や按分基準は文書化して保管し、必要に応じて見直しましょう。
●按分基準を実態に即した内容に更新することで、正確性を保ちます。
3. 公益目的取得財産残額の算定簡素化
新制度では、公益目的取得財産残額の算定が簡素化され、新しい算出表(簡便版)が導入されます。この新表を使用することで、従来の別表H(定期提出書類)は廃止され、計算上の誤りが減り、事務作業の負担が軽減されます。
※ 公益目的取得財産残額は、公益認定法第30条および同法施行規則第48条に規定される、毎事業年度末における公益目的事業財産の未使用残高を指します
4. 区分経理導入の準備ステップ
スムーズに移行するためには、以下の準備が必要です。
1. 現状分析 : 現行の会計システムや経理方法を見直し、課題を特定。
2. システム整備 : 区分経理に対応した会計ソフトの導入またはアップデート。
3. 規程の整備 : 経理規程を改定し、新しい運用ルールを明文化。
4. 職員研修 : 関係職員に対し、新しい会計処理方法を研修。
5. 試行期間の設定 : 本格導入前に試行期間を設け、問題点を洗い出す。
試行期間中に課題を把握し、解決策を検討することで、本番運用を円滑に進めることができます。
5. まとめ
区分経理を新たに導入する場合、その準備には時間がかかるため、早めの行動が重要です。試行期間を設ける、職員研修を行うなど、計画的に進めていきましょう。また、必要に応じて専門家のアドバイスを活用することをお勧めします。