ヒューマンライズ Labo
- TOP >
- ヒューマンライズ Labo >
- 2025.11.24
公益法人ガバナンス強化の最前線と取り組み事例
2025.11.24
公益法人ガバナンス強化の最前線と取り組み事例
「研究会」だより

なぜガバナンス強化が求められているのか
公益法人においても近年、運営の透明性・公正性を高める必要性が叫ばれています。その背景には、2008年制度施行後の社会環境の変化があります。新型コロナ禍や自然災害が頻発する中、公益法人にも柔軟で迅速な事業対応が求められていますが、従来の厳格な財務規律(収支相償や遊休財産規制など)が中長期計画や機動的運営を妨げていたとの指摘があります。このため、2025年4月施行の改正公益法人法では、財務規律の緩和とともにガバナンス強化が改革の柱とされ、例えば公益法人に区分経理の原則化や外部監査人の義務化などが盛り込まれました。
また、過去の運営上のトラブルもガバナンス強化の要因です。リーマン・ショック前後に宗教法人や学校法人で行ったデリバティブ投資で巨額損失が発覚し、「緩い会計基準が招いたリスク管理の欠如」と報じられました。こうした事例は、外部専門家から「株式市場の審査を受けない公益法人は事実上リスク管理ルールが緩い」と指摘される契機となり、不祥事への対策強化の要請が高まっています。実際、内閣府の有識者会議報告でも、違法・不当行為が特定個人に集中すると牽制機能が働かず、大きな不正につながる事例の存在が指摘されました。これらを受け、外部視点の導入や内部牽制の充実といったガバナンス改革が求められています。
目次
- 1. よくある課題や盲点
- 2. ガバナンス強化の取り組み事例
- 3. まとめ:ガバナンス強化のポイント3つ
1. よくある課題や盲点
公益法人がガバナンス強化で直面しがちな課題には、次のようなものがあります:
・ 理事会運営の不備 : 定款や規程で理事会運営ルールを十分に定めていない法人が多く、開催頻度の設定や議事録作成などが曖昧になりがちです。代表理事や執行理事など一部の理事が情報を独占し、理事会が適切に進行されないケースもあるようです。このような環境では必要な意思決定が理事会で適切に行われず、法人運営全体の透明性が損なわれる危険があります。
・ 内部統制・リスク管理の欠如 : 役職員による不正・ミスを防ぐための体制が未整備な例も少なくありません。2025年法改正で公認会計士等による監査対象の範囲が拡大されていますが、監査を受けるには有効な内部統制システムを設計・運用する必要があります。加えて、有効な内部統制は監査の有無にかかわらず公益法人の持続的成長につながるとの指摘もあり、各団体に適したリスク管理規程や業務手順を整備することが重要です。
・ 役職員の責任範囲のあいまいさ : 理事や評議員が自身の役割を果たしていない例も散見されます。複数の理事がいても実質的には特定理事に業務を丸投げし、他の理事は議決権の行使や監督に無関心というケースでは、定足数不備のまま運営報告に虚偽記載するなど不適切運用の発生事例もあります。
また、監事や評議員が法人外の利益集団の影響下にあると、横領事件が起きて
も再発防止策が取れないなど不祥事対応が後手に回る原因になります。監査の役割を担う評議員・監事と業務執行担当者の緊張関係が機能しないと、法人外部への説明責任も果たせなくなります。
2. ガバナンス強化の取り組み事例
近年、実際の公益法人で導入が進む取り組みには以下の例があります:
・ 理事会運営ルールの整備 : 理事会開催時期や議事運営方法を定めた「理事会運営規程」を制定し、開催通知・議事録の作成基準を明確化します。事前に議題資料を共有して議論の方向性を定めたり、議決要件や委任規定を定款・規程に盛り込む事例もあるようです。定款で理事会の開催頻度や通知期間を決めておくことで、迅速かつ透明な意思決定が期待できます。
・ 外部有識者の導入 : 外部の異なる分野の専門家、学識経験者を理事や監事、評 議員に選任し、客観的な視点を取り入れる例が増えています。例えば、有識者会議の提言でも「理事・監事・評議員のうち、各機関に少なくとも一人は法人外部の者を選任することが有効」と指摘されており、これに沿ってガバナンス・コードを策定する団体もあります。外部理事が入ることで、業務執行への牽制・監督機能が強化されます。
・ 監事(監査役)機能の強化 : 社内監査や内部監事の独立性を確保し、会計監査の質を上げる取り組みです。公認会計士等による会計監査の対象拡大に対応し、会計監査人を依頼する法人は、監査準備として帳簿や内部統制の整備に着手しています。一方で法定監事の報酬や権限を見直し、独立性を確保する事例もあります。
・ リスク管理マニュアルや行動規範の導入 : 職員・理事が守るべきコンプライアンス・コード(行動基準)やリスク管理規程を作成し、周知徹底する法人が増えています。例えば、外部研修や内部通報制度を整備し、ハラスメント防止や不正監視の体制を整える動きもあります。
3. まとめ:ガバナンス強化のポイント3つ
1.外部視点の確保 : 理事会や監事に外部有識者を入れ、専門家や第三者の視点で事業執行をチェックする仕組みを持つ。
2.内部統制の徹底 : 会計監査の有無にかかわらず、役職員の業務分掌や承認フロー、リスク管理規程を整備し、不正やミスを防ぐ体制を作る。
3.法令・ルール遵守の自覚 : 定款・規程に沿った理事会運営や業務執行を徹底すること。理事会の招集・決議要件や議事録作成など基本ルールを明確化し、社員や評議員とのコミュニケーションも密にすることで、信頼性の高い法人運営を実現しましょう。
以上の視点を踏まえて、それぞれの団体に最適なガバナンス強化策を検討・実行することが重要です。満喜株式会社は引き続き最新動向を注視しつつ、公益法人の皆様の改革を支援してまいります。







