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意外と知らない!令和6年公益法人会計基準、3年間の経過措置を賢く活用する方法
2025.10.13
意外と知らない!令和6年公益法人会計基準、3年間の経過措置を賢く活用する方法
「研究会」だより

新基準への対応には「改正内容の理解」や「会計システムの改修」、そして「職員の教育・研修」など、多くの課題が伴います 。特に、過去の方法と異なる処理を行うことで、移行期に会計処理のミスが発生するリスクも懸念されます 。
しかし、ご安心ください。この大きな変革期には、実務担当者を救う「3年間の経過措置」という強力なセーブポイントが設けられています 。この期間を「ただの猶予期間」として見過ごすか、「将来の成功のための戦略的な準備期間」として活用するかで、法人の未来は大きく変わります。
本稿では、この3年間の経過措置を賢く使いこなし、法改正の波を「飛躍のチャンス」に変える具体的な戦略をご紹介します。
目次
1. そもそも、2025年法改正が目指す「変化」とは?
今回の公益法人制度改革は、単なる手続きの変更に留まりません。その目的は、公益法人が社会のニーズに迅速に応え、より自律的で透明性の高い運営を行うための「土台づくり」にあります。
主要な変更点は、主に以下の3点に集約されます。
1.財務規律の柔軟化・明確化:従来の「毎年の収支均衡」の原則が緩和され、中期的な期間(5年間など)で収支の均衡が認められるようになります 。これにより、一時的な黒字を許容しつつ、長期的な事業計画に基づいた、柔軟で積極的な財務運営が可能になります。
2.行政手続の簡素化・合理化:事業内容の軽微な変更などが事後届出で済むようになり、行政庁の事前認定を待つ時間が短縮されます。これにより、社会の変化やニーズに合わせた機動的な事業展開が可能になります。
3.自律的ガバナンスの充実と透明性の向上:組織の自己規律を強化するため、外部人材(外部の理事・監事)の登用が義務化されるなど、外部の客観的な視点を取り入れることが求められています。
これらの変化は、公益法人の「運営の自由度」を高める一方で、「自律的な責任」も強く求めていることを意味します。そして、財務管理体制を強化し、この新しい責任を果たすための準備期間こそが、「経過措置」なのです。
2. 「3年間の経過措置」とは何か?
新公益法人会計基準は、法改正と併せて2025年4月1日以降に始まる事業年度からすでに適用が開始されています。
しかし、基準の改正に伴うシステム対応や組織体制の整備には時間がかかるため、最大3年間、新基準を「任意に適用できる期間」を設けています 。つまり、法人はこの3年間の間で、準備が整い次第新しい基準に移行してよい、ということです。
この猶予期間をどう捉えるか—ここが重要な分かれ道です。
⚫️「先延ばしの猶予期間」と捉える:準備を怠り、3年後に慌てて新基準に飛び込むことになります。その結果、会計処理のミスやシステムの不具合、職員の混乱を招き、行政庁への提出書類作成が難航するリスクが高まります。
⚫️「戦略的準備期間」と捉える:この期間を使い、新基準を「予行演習」し、問題点を洗い出し、職員のスキルを上げ、新制度を財務管理の側面から支える体制を構築して本番を迎えることができます。
3. 経過措置を賢く使いこなす「3つの戦略」
この3年間の任意適用期間を最大限に活用し、法人の体質を強化するための具体的な戦略を3つご紹介します。
戦略1:会計システムと業務フローの「試運転」期間にする
新基準では、財務諸表の構成そのものが変わり、「正味財産増減計算書」が「活動計算書」に名称変更され、貸借対照表の資産区分が企業会計に近い形に変更されます。
これは、単に勘定科目を変更すれば済む話ではなく、日々の記帳業務から決算書類の作成に至るまでの業務フロー全体の抜本的な見直しを意味します。
〇賢い活用法:
・ 強制適用を待つのではなく、この3年間の間に、新基準に対応した会計システム(あるいはシステム改修)を導入し、現行基準と並行して「試運転」を行いましょう。
・ 財務諸表本表が簡素化され、詳細情報が開示される「注記」情報の収集・作成プロセスが、現在の業務フローで滞りなく行えるかを検証します。
・ システムを実際に運用しながら、不具合や非効率な点を洗い出し、完全に本番移行する前に解消しましょう。
戦略2:職員の「再教育」に計画的に投資する
新しい会計処理方法や計算ルールに適応するためには、経理担当者の再教育・研修が不可欠です。改正内容の理解が不十分なまま新基準に移行すると、移行期に会計処理のミスが発生するリスクが高まります 。
〇賢い活用法:
・ この期間を使い、経理・会計担当者向けの研修を段階的に、かつ集中的に行います。
一度に詰め込むのではなく、業務の合間に着実に理解を深める時間を確保しましょう。
・ 新基準で変わる「区分経理の原則化」「一般純資産・指定純資産の管理方法」などの具体的な処理について、シミュレーションを通じて習熟させることが重要です。
・ 組織全体で透明性向上への意識を共有するため、会計知識に不安がある役員や職員も含め、法改正の基本的な考え方を理解してもらう機会を設けましょう。
戦略3:中期財務戦略とガバナンス体制を「練り直す」
財務規律の柔軟化により、法人は中期的な視点(5年間など)で財務計画を再構築する必要があります 。
また、ガバナンス強化のための外部人材の登用義務化は、適切な人材を探し、理事会・監事の構成を見直し、定款や経理規程等の内部規程を整備する「準備期間」を必要とします。
〇賢い活用法:
・ 「中期的な収支均衡」を前提とした新しい事業計画と予算案を策定し、この3年間でシミュレーションを行います 。これにより、将来の公益目的事業への積極的な投資計画を具体化できます。
・ 外部の理事・監事の選任とともに、事業及び事務処理遂行のための各種内部規定の整備により適正なガバナンスの強化を図ります。
4. 満喜株式会社が、あなたの「戦略的準備」をサポートします
この3年間の経過措置を有効に活用できるかどうかは、緩和される財務規律に対する責任としての財務情報の適切な開示と透明性の向上を実行するための体制の確立に直結します。
満喜株式会社は、システムと業務そのものの支援を含むサポートを一体としてサービスをご提供し、「戦略的準備」のご支援をいたします。
システムでは、「暫定版」をご用意し正式な令和6年会計基準移行前に新しい様式による財務諸表及び注記の作成が可能です。各種シミュレーションにご利用いただくことができます。
サポート業務では、疑問が生じた処理についてご相談いただくことができます。「この預金科目は流動資産?固定資産?」「この注記は何をどのように記載すればいい?」などのご質問に的確なアドバイスを行うことができます。
また、「新基準用勘定科目案の作成」や「経理規程の見直し」「予算案の作成」など、新基準移行をトータルでご支援するコンサルティングサービスもご用意しております。
満喜株式会社では、お客様が戦略的準備期間を最大限に活かし、安心して新基準に移行していただけるよう、強力にサポートさせていただきます。