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「なぜ今、公益信託なのか?」——2026年制度改革の全貌と、NPO・公益法人に求められる新たな役割

「研究会」だより

令和8年(2026年)4月1日——この日、日本の公益信託制度が大きく生まれ変わります。

あなたの団体が遺贈寄付を受けたとき、自ら「受託者」として公益信託を運営できる時代が、もう目の前に来ています。かつては信託銀行しか担えなかったその役割を、これからはNPO法人や公益社団・財団法人も担えるようになります。制度の根幹が変わるこの改正は、単なる法令のアップデートではなく、日本の公益活動の未来を形づくる「制度インフラの再設計」です。

本稿では、どなたでも理解していただけるよう用語の解説を交えながら、制度改革の要点と、非営利セクターに求められる実務的アクションについて深掘りしていきます。

    1. 公益信託制度、なぜ見直されるのか?——数とスケールの対比から考える

    公益信託とは、個人や団体(委託者)が金銭等の財産を学術、技芸、技芸、慈善、祭祀等の公益目的(たとえば奨学金支援や文化財保護など)のために信託し、受託者(これまでは信託銀行が主)がその財産を管理・運用し、公益目的の実現を目指す制度です。

    しかしこの仕組み、実際にはあまり使われていないのが現状です。
    内閣府資料(令和6年3月)によると、公益信託の件数は全国で400件弱、信託財産の総額はおよそ500億円となっており、減少傾向にあります。一方で、公益法人制度には法人格を持つ約9,700団体が存在し、総事業費は約5兆円規模と言われています。
    この対比から明らかなように、公益信託は本来のポテンシャルを発揮できていないのです。その背景には、制度の硬直性や手続きの煩雑さ、受託者が信託銀行等に限られていたことなどがありました。そうした課題を解消するべく、公益信託に関する法律が改正され(令和6年法律第30号)、制度全体の抜本的な見直しが図られました。


    2. 制度改革の核心——6つのポイントをやさしく解説

    認可制への移行:制度の入口が変わる
    これまで公益信託を設立するには、各主務官庁の「許可」が必要でした。しかし新制度では、公益法人と同様、**行政庁(内閣府または都道府県知事)による「認可制」**に変更されます。
    これは、公益認定法の枠組みを活用することで、審査の基準を明確にし、全国一律の運用を目指すものです。かつてのように主務官庁ごとに基準が異なることはなくなり、申請者の負担も軽減されます。

    受託者の多様化:あなたの団体が信託を運営できる時代に
    最大の注目点は、法人や公益法人も受託者になれるという制度改正です。たとえば、ある地域の子ども食堂を支援するNPOが、遺贈寄付を受けて公益信託を設立し、その運用益で継続的な事業を行う。こうしたスキームが、現実のものになります。

    この背景には、信託銀行だけでは拾いきれない地域密着型のニーズや、柔軟で創造的な公益活動への期待があります。

    信託行為の明確化:契約書の透明性が求められる時代
    新制度では、信託契約(信託行為)に盛り込むべき項目が整理され、「必要的」「相対的」「任意的」記載事項として区分されます。たとえば、

     ⚫️必要的記載事項:信託財産の内容(例:現金、不動産)、公益目的(例:奨学金給付)
     ⚫️相対的記載事項:信託期間、監督人の設置
     ⚫️任意的記載事項:広報方針、寄付金募集方法 など

    これにより、受託者が何を担うのかが契約段階で明確になり、ガバナンス上の責任範囲もクリアになります。

    ガバナンスと透明性の強化:不正の予防が制度の信頼を支える
    新制度では、利益相反取引の開示義務や特別利益供与の禁止などが明文化され、運営の健全性が厳しく問われます。これは、寄付者や社会からの信頼を確保するために不可欠です。
    とくに関連当事者との取引においては、「説明責任」が問われる場面が増えると想定され、公益法人等における内部統制の重要性が一段と高まります。

    特定資産公益信託:小さな信託を動かす新類型
    新設される「特定資産公益信託」とは、主に金銭など特定資産を対象とした小規模な信託で、財務規律や開示項目が簡素化されたモデルです。これは、地域の個人や小団体が信託を設ける際の新たな選択肢となると期待されています。

    ただし、この詳細は、政省令で規定される予定であり、5月に終了したパブリックコメントの結果等をもとにまだ調整中です。今後の公表を待つ必要があります。

    受託者の事務負担軽減:現場の声を反映した簡素化
    書類提出の電子化、行政手続の簡略化などが進められ、受託者の実務負担が軽くなります。これにより、経験の浅い団体でも制度に参入しやすくなる環境が整いつつあります。


    3. 公益法人・NPOに求められる、新しい「担い手」のかたち

    地域密着の公益活動が制度の可能性を広げる
    地元の高齢者支援団体が受託者となり、遺贈を活用して介護予防プログラムを提供する。そんな使い方が現実になれば、これまで届かなかった層にも信託の恩恵が届くようになります。

    現場発のイノベーションが制度に命を吹き込む
    公益法人やNPOは、現場で生まれるニーズや課題に即応できる機動力を持ちます。新制度では受託者の裁量が一定認められ、たとえば「SNSによる受益者の選定」「クラウド会計を活用した報告書作成」など、新しい実務モデルの創出が期待されます。

    税制優遇の拡充によるメリット
    公益信託には、寄付金控除や譲渡所得非課税などの税制優遇があります。新制度では、特定資産型信託における簡素な報告義務とのバランスを取りながら、税制上の恩恵をどう受けるかも検討のポイントになります。

    受託者になる前に整えておきたいこと
    実際に受託者になる際には、以下のような体制整備が求められます。

     ⚫️定款や事業計画の整備(信託目的との整合性確認)
     ⚫️内部監査・会計報告体制の強化
     ⚫️受益者対応のガイドライン整備
     ⚫️信託財産の管理ルール策定

    これらは形式的な準備ではなく、社会的信頼を得るための基盤整備です。


    4. 今後の展望と研究会からの提言

    制度詳細を定める政令・府令の策定は現在、進行中です。特定資産公益信託以外に、以下のような項目も詳細決定待ちとなっています。

     ⚫️特別利益供与の範囲
     ⚫️少額信託における開示項目の水準
     ⚫️行政庁とのコミュニケーションルールの明確化

    私たち研究会では、これらの点に注視しつつ、制度が現場で有効に活用されるよう、継続的に情報を発信していきます。


    5. 最後に:あなたの団体へのメッセージ

    この改革は、あなたが主役になる、まさに転換点です。この制度改革の成否は、新制度の担い手となる受託者がカギを握っています。信託を受けるどのような財産を使って、どのような公益目的の実現を描くのか、その構想、提案がポイントとなるでしょう。

    我々もこの制度の動向を注視し、適宜、情報発信して参ります。
         引き続きご注目ください。


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