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「研究会」便り 第3回
「研究会」便り
◆「研究会」とは?
ソフトウェア業界の最新の動向や技術に関すること、公益法人をはじめとする非営利分野の会計を含む制度に関する調査、研究を行い、ソフトウェア開発に活かすために満喜株式会社内に設けた組織です。
今後、『「研究会」便り』では弊社のソフトウェアに関すること、制度に関することなど、私見が入ることもあるかと思いますが、情報発信していきます。
目次
1. 第3回 指定正味財産の整合性について
指定正味財産の整合性について
指定正味財産は、公益法人会計基準の運用指針において「寄付者等(会員等を含む)によりその使途に制約が課されている資産の受入額」と説明されています。
公益法人会計基準においては、貸借対照表について、正味財産の部を指定正味財産及び一般正味財産に区分し、指定正味財産及び一般正味財産のそれぞれについて、基本財産への充当額及び特定資産への充当額を内書きとして記載することになっています。(基準第2(2))
正味財産増減計算書については、一般正味財産増減の部及び指定正味財産増減の部に区分し、指定正味財産増減の部は、指定正味財産増減額を発生原因別に表示し、これに指定正味財産期首残高を加算して指定正味財産期末残高を示すことになっています。(基準第3(2)(3))
また、注解4(2)において 寄付によって受け入れた資産で、その額が指定正味財産に計上されるものについては、基本財産又は特定資産の区分に記載するものとされ、注解6において寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途について制約が課されている場合には、当該受け入れた資産の額を、貸借対照表上、指定正味財産の区分に記載し、当該寄付によって受け入れた資産の額は、正味財産増減計算書における指定正味財産増減の部に記載することが示されています。
公益法人や一般法人などの非営利法人においては、補助金や寄付金の多くは使途が指定されており、寄付者等の指定通りに基本財産または特定資産が存在することを明示して、受託者責任(寄付を受け取った法人が持つべき責任)を明確にする必要があります。その際、次の等式の関係にあることも併せて確認が必要です。
①貸借対照表・指定正味財産の額=正味財産増減計算書・指定正味財産期末残高
②貸借対照表・指定正味財産の額=指定正味財産の財源内訳として示される国庫補助金、寄付金等の合計
③貸借対照表・指定正味財産の額=指定正味財産のうち書きとして示される(うち基本財産への充当額)及び(うち特定資産への充当額)の合計金額
④指定正味財産の額=対応する基本財産の額+対応する特定資産の額
ただし、これらの整合性を保つのは非常に困難です。何故なら貸借対照表における指定正味財産の財源内訳やうち書きに相当する部分は、直接の仕訳対象の「科目」ではないからです。
ヒューマンライズ会計システムでは、正味財産増減計算書における指定正味財産増減科目の仕訳の際に、貸借対照表・指定正味財産の財源内訳の情報を付加し、さらに基本財産、特定資産科目の仕訳の際に財源の情報を付加することで誘導的に財務諸表、注記が作成できるようにしています。しかし、上記2種類の仕訳を分けて処理することで片方の作成を失念したり、基本財産、特定資産の財源の入力を誤るという可能性もあります。このため必要な仕訳を失念することがないようもう一方の仕訳入力を促すメッセージを表示したり、①の不整合を回避するため、指定正味財産に係る仕訳チェックリストの出力とその出力を促す機能を有しています。それでも正味財産増減計算書においては指定正味財産の当該年度の
増減に関しては発生原因毎に記載しますが、残高は指定正味財産全体の額しか表示しないため貸借対照表・指定正味財産の財源内訳の額が累計値として適切かどうか確認できないという問題は残ります。
指定正味財産については、その処理の煩雑さ、管理の困難さ、使途特定方法の不明確さなど様々な指摘がされていますが、寄付者等から受け入れた資金に対する受託責任を明確にすることが公益法人会計のメインテーマであることにかわりなく、ヒューマンライズにおいても最大限に配慮すべきことと認識しています。