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「研究会」便り 第2回
「研究会」だより
◆「研究会」とは?
ソフトウェア業界の最新の動向や技術に関すること、公益法人をはじめとする非営利分野の会計を含む制度に関する調査、研究を行い、ソフトウェア開発に活かすために満喜株式会社内に設けた組織です。
今後、『「研究会」便り』では弊社のソフトウェアに関すること、制度に関することなど、私見が入ることもあるかと思いますが、情報発信していきます。
目次
1. 第2回 正味財産増減計算書の役割について
今回は、正味財産増減計算書の役割について考えたいと思います。
平成16年基準では、その前文において「公益法人においても一層効率的な事業運営が求められることとなり、事業の効率性に関する情報を充実させる必要が生じている。また、一部公益法人による不祥事等を受けて、公益法人の事業活動の状況を透明化し、寄付者等から受け入れた財産の受託責任についてより明確にすることを通じて、広く国民に
対して理解しやすい財務情報を提供することが求められている。さらに、公益法人の活動状況を分かりやすく広く国民一般に対して報告するものとするため、会計基準の全面的な改正を行うこととした。」と説明され、正味財産増減計算書を中心とする財務諸表体系への見直しが行われました。
しかし、正味財産増減計算書では提供を受けた資金で積立を行ったり、事業のために使用する固定資産の購入などが反映されず、事業の全貌を表すことができません。
また、公益法人は収益を最大にすることがその行動原理ではなく、その事業を必要とする不特定かつ多数の人々の利益の増進に寄与するために公益的活動を実施することが本来の姿です。従って、事業の効率性は、どれだけ利益を上げるかではなく、同じ原資を使い、いかにより高い公益性を実現するかに、求められるべきであり、事業活動の全貌を表す
ことができない正味財産増減計算書とその計算結果である当期正味財産増加(減少)額によって、公益事業の効率性が測れると考えることには疑問を抱かざるえを得ません。
一方で一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第202条では解散事由の1つに 「純資産額が2年連続で300万円を下回ったとき」と挙げられています。正味財産増加(減少)額は、当該事業の採算状況を示すとともに、期末残高は、この持続可能性を測る客観的な指標として機能しています。
もう1つ、正味財産増減計算書は、貸借対照表のすべての科目の増減を取引として認識し、その増減によって正味財産額が変化する場合に、その増加又は減少原因を記録します。つまり、資金(≒現預金)の増減取引だけではなく減価償却による資産の減少、引当金の設定による負債の増加、現物寄付などによる資産の増加など、非資金項目の増減取引も記録対象です。従って、貸借対照表の正しい残高を帳簿記録から導くためには正味財産増減計算書が必要であり、公益法人会計における財務諸表体系には不可欠であるということができます。