ヒューマンライズ Labo
- TOP >
- ヒューマンライズ Labo >
- 2026.03.23
その書類、このまま出して大丈夫ですか?――4月から変わる情報公開、実務担当者の注意点
2026.03.23
その書類、このまま出して大丈夫ですか?――4月から変わる情報公開、実務担当者の注意点
法令・制度改正
「いつも通り作った書類を提出したら、社員の自宅住所がネットに載っていた」
令和7年4月1日以降、こうした事態が実際に起こりうる環境になります。制度が大きく変わるのに、現場への周知が追いついていないケースが少なくありません。この記事では、法律の細かい説明は省いて、実務担当者が「何を・いつまでに・どう対応すればいいか」をお伝えします。
目次
- 1. まず知っておくべきこと――何がどう変わるのか
- 2. 担当者が特に注意すべき3つのリスク
- 3. 今日から使える3つの対策
- 4. まとめ
1. まず知っておくべきこと――何がどう変わるのか
これまでの制度では、行政庁に提出した詳細な書類は「事務所への備置き」が基本でした。外部の人が内容を見るには、請求手続きが必要で、実質的に目に触れる機会は限られていました。
令和7年4月以降は、この仕組みが根本から変わります。
提出した書類は、「公益法人 information」などのシステム上で、一般の人がいつでも検索・閲覧できる状態になります。
ここで多くの担当者が誤解しがちな点があります。「行政庁側で個人情報を消してくれるのでは?」と思われる方もいますが、そうではありません。法人が提出したファイルがそのままアップロードされます。 マスキング(黒塗り)等の作業は、法人側の責任で事前に行う必要があります。
つまり、提出ボタンを押した時点で、書類はそのままインターネットに公開されます。 この前提を、まず実務の出発点として持ってください。
2. 担当者が特に注意すべき3つのリスク
リスク① 社員などの個人情報がそのまま出る
社員名簿を作成する際、住所欄を含んだままのフォーマットで提出していませんか。
旧制度では「備置き用」の書類に住所が入っていても、外部に広く公開されることはほとんどありませんでした。しかし4月以降は、住所入りの名簿をそのまま提出すると、社員全員の自宅住所がインターネット上に公開されることになります。
役員等名簿と社員名簿では、住所を隠すための仕組みが異なります。 役員等名簿は、行政庁のシステムで「住所あり(閲覧用)」を入力すると、住所を除いた「公表用」が自動生成されます。
問題は社員名簿(公益社団法人が対象)です。現行の内閣府システムでは、社員名簿の住所を自動的に除外する機能がありません。そのため、法人が自ら「住所なし版」をExcel等で手作業で作成し、添付ファイルとして提出する必要があります。この手作業の工程で、消し忘れや「住所あり」ファイルの取り違えが起きると、そのままインターネットに公開されます。行政庁側が内容を確認して止めることはありません。
また、名簿以外の書類(事業報告・事業計画など)にも、本人の同意のない個人情報が混入しやすい箇所があります。具体的な確認項目は後述のチェックリストを参照してください。
なお、書類に含まれる印影(はんこの画像)も個人情報として扱われます。含める場合は事前に本人の同意を得る必要があります。また、悪用リスクを避けるために黒塗りで除去する、あるいは最初から含めないという対応も認められています。

リスク② 役員への高額な支払いが「金額+理由」でセット公開される
法人から受ける「財産上の利益」の総額が年間2,000万円を超える理事・監事については、その金額とその額が必要な理由を記載し、公表しなければなりません。
「財産上の利益」という言葉は、役員報酬だけを指しません。役員報酬・賞与に加え、兼務している職員としての給与、顧問料・原稿料、退職金なども合算されます。役員報酬単体では2,000万円以下でも、これらを足して超えれば記載・公表の対象です。名目を分けて支払っても合算されるため、「報酬は高くない」と思っている法人ほど見落としやすい項目です。
また、理由の書き方にも注意が必要です。「規定に基づき支給」といった形式的な記載では不十分で、業務内容や専門性、民間企業との比較など、社会通念上説明できる具体的な根拠が求められます。
経理・財務担当にとって最も見落としやすいのは「合算ルール」です。報酬規程の金額だけで判断せず、当該役員への支払い総額を一度洗い出してみることを強くおすすめします。

リスク③ 関連当事者との取引内容が外部から見える
役員やその近親者、法人が支配関係にある団体との取引は、計算書類の注記などを通じて公開されます。
取引そのものが問題なくても、外部から見て「なぜこの取引が必要だったのか」が説明できない状態になっていると、ガバナンス上の問題として指摘されるリスクがあります。
また、海外への送金がある法人は、その実施状況やテロ資金供与リスクへの対応内容も公開対象に含まれます。国際的な活動を持つ法人は、この点も確認しておく必要があります。
「問題ない取引だから大丈夫」ではなく、「見られても説明できる状態か」という視点で内容を見直すことが重要です。
3. 今日から使える3つの対策
対策① 名簿の種類によって、対応方法が異なることを理解する
名簿の住所対策は、書類の種類によって仕組みが違います。一律に考えると抜けが生じます。
役員等名簿:システムが自動で「公表用(住所なし)」を生成してくれます。正確に入力さえすれば、住所が漏れるリスクは構造的に低くなっています。担当者がすべきことは「入力内容の正確性を確認すること」です。
社員名簿(公益社団法人): こちらはシステムによる自動処理がありません。法人が自ら「住所を除いたファイル」を手作業で作成し、添付して提出する必要があります。対応として徹底すべきは次の2点です。
・ 住所なし版ファイルは、専用フォルダに保存し「公表用」とファイル名で明示する
・ 送信直前に、添付ファイルを開いて住所が含まれていないことを目視で確認する
「いつもと同じファイル」を添付する操作ミスが最大のリスクです。特に複数名で作業を分担している場合は、最終確認者を明確に決めておくことが重要です。

対策② 提出前に「公開前提チェック」を1枚のリストで回す
書類の完成=提出可能、ではなくなりました。今後は「公開しても問題ないか」という視点のチェックを、承認フローに正式に組み込む必要があります。
提出書類に個人情報が混入しやすい箇所は、意外と広範囲にわたります。以下を確認の基準にしてください。
個人情報・プライバシー関連
・ 役員・社員の住所、電話番号、メールアドレス
・ 本人同意のない氏名・写真
・ 印影(はんこの画像)
・ 署名・サイン
・ 講師・登壇者・受益者の個人経歴
・ 個人が特定できる活動履歴や発言内容(監事の経歴など)
財務・取引関連
・ 財産上の利益が2,000万円超の対象者がいる場合、記載内容を当事者と事前確認しているか
・ 関連当事者との取引注記の内容は、外部から見ても説明できる状態か
このチェックリストを1枚にまとめ、提出書類に添付して承認する運用にすると、確認漏れを組織的に防げます。「個人情報が入っていないか」という漠然とした確認より、「どこに入りやすいか」を全員が知っている状態を作ることが重要です。

対策③ 公開したくない議論の過程は議事録に残し、書類から切り離す
理事会等の議事録は公表対象から除外されています。
事業計画書や事業報告書に「検討の経緯」や「内部で議論した詳細」を書き込む必要はありません。公開前提の提出書類には「決定した事項と結果」のみを記載し、経緯や議論は議事録側に記録する、という整理で対応できます。
「書類に詳しく書くほど丁寧」という従来の感覚は、今後は逆効果になる場合があります。
4. まとめ
令和7年4月以降、行政庁への書類提出は「公開前提の行為」になります。
特に注意が必要なのは次の3点です。
1.個人情報(住所・印影など)の混入 → 社員名簿は手作業で住所なし版を作成・目視確認する
2.役員への財産上の利益(合算2,000万円超)の金額・理由の公開 → 支払い総額を洗い出し、事前に関係者と内容を確認する
3.関連当事者取引の外部からの可視化 → 「見られても説明できる状態」を基準にする
制度が変わることへの対応は、知っているかどうかで差がつきます。「旧制度の感覚のまま提出期を迎えない」ことが、実務担当者として今できる最大の準備です。

本記事は令和8年3月時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細・個別の判断については、所管の行政庁または専門家にご確認ください。







